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強迫性障害支援 OCDお話会 有園さん へ調査

先日はOCDサポート・OCDお話会を実施されている有園さんに、強迫性障害(OCD)の患者会であるOCDお話会についてを伺いました。

強迫性障害の元当事者ならではの当事者に対する思いとお気遣いが伝わりました。

 

目次

(1)OCDお話会の活動と経緯

(2)会の内容と気を付けている点

(3)日本の現状と今後への要望

(4)元当事者ならではの視点

 

(1)OCDお話会の活動と経緯

 

貴団体の活動内容について教えてください。

OCDお話会は、2006年から開催してきましたが、2020年の新型コロナにより会場での開催を中止しています。
2020年3月までの参加者募集は、インターネットに掲載していて、それを見つけた人がメールに必要事項を書いて申し込んでいました。OCDお話会のHPは [ https://ocdsup.net/oha/ ]です。
これまでに、たぶん合計1000人近くの参加者がいました。

 1000人も来ていらっしゃったんですね!すばらしいです。このような活動を始めたきっかけは何ですか?

私は、今ではカウンセラーとして働いているのですが、1989年、29歳の時に私は強迫性障害を発症した経験があります。当時はまさか自分がそうなるとも思わなくて、始め自分が何になったのかわかりませんでした。当時の精神病院は、すごく閉鎖的なイメージで行きづらかったんですよ。それに、当時は、現在のような薬物療法や認知行動療法が、まだ日本ではほとんど知られていませんでした。そこで、自分で調べて、症状を改善していったわけです。

 

 

症状が改善した後、1997年頃からインターネットを使うようになっていろんな人が強迫性障害の情報を発信しているのを知りました。そこで、迫性障害が治らなくて困っている人の存在を知り、も情報を発信するようになりまし次に、地域精神病を抱えた方の支援を行うボランティアやアルバイトをして、強迫性障害の患者さんにもやはりネットではなく直接会った方がいいと思ってお話会を開きまし当時は、インターネットでちょっとずつ情報が知られるようになったとはいえ、生の体験をした人の話を聞くのは違うと思ったので、そういう場を作った、というのがきっかけです

 

情報共有の場から始まったんですね!

私は、自分が病気だった頃、同じ病気の他の患者に出会うことがなく、孤軍奮闘していましただから、今、病気を抱えている人が自分だけではないと実感できればと思いました。当会ができる少し前に、熊本でOCDの会ができて、その頃から患者さんにも行動療法が知られてきました。

なるほど、ありがとうございます。

 

(2)会の内容と気を付けている点

参加者は自分で探してOCDお話会に来られることが多いのですか?

そうですね。インターネットで検索して知る人が多いと思います。また、先に参加した家族や知人による紹介というケースもあります。

実際、OCDお話会にはどんな感じの方が来ていらっしゃるんですか?たとえば身体的に歩いていけるか不安な方は来られるのでしょうか。

それを答えるには、強迫性障害とは、どのような症状なのかを説明した方がいいと思います。強迫性障害は、精神的な症状のために、四六時中手洗い、消毒するとか、提出物にミスがないかなど、何度も確認してないではいられないようなタイプの人が多いです。患者さんの中には、歩行や電車の利用が苦手で、一人で来るのが難しく、家族に車で送迎してもらう人もいました。

なるほど、わかりました。このようなお話会を開催する上で気をつけていらっしゃる点はありますか。

なるべく参加者の気持ちを理解して、信頼関係を築きたいと思っていますそのためには、まず症状を悪化させないことが必要です。当会では、患者さん同士の双方向のやり取りができますが、話が誤解されたり、トラブルになったりしないよう、私が司会をして調整するようにしています。

参加者に具体的にどのように声をかけられていますか?精神障害の方と接すると気を使うことがあると思うので...

精神障害の方だからというのではありませんが、病気というプライベートな内容を扱うので、会のルールを決めて、参加者には、ルールを守っていただくようお願いしています。

回数を重ねるうちにだんだんと工夫して、ルールを調整していきました。この会のルールとして、参加者同士では「アドバイスしない」というものがあります。また、過去には男女間のトラブルもあったので、そういう男女の交際目的では来ないようお願いしています

対面での開催を重視している理由について聞きたいです。

参加者には、会で知ったことを他の人に出さないでもらうことを条件として参加してもらっています。そうすると会場のメリットは、オンライン会議のように他の家族が聞いてしまうようなリスクがありません。また、OCDお話会では、録音・録画をしないようお願いしていますが、それも会場での開催の方が管理しやすいです。あと、強迫性障害の症状に強迫観念があって、考え方が現実に基づいていない知識や想像に傾きやすいという傾向があります。だからなるべく実際の体験を重視して欲しいと思っているためです。

ただ、今後は、オンラインでの開催もできればと思い、検討しています。

会では、参加者の各々の悩みを共有するのでしょうか。それとも一つの議題に対して話し合うのでしょうか。

通常のお話会では自己紹介してもらって、OCDの特性とかを私が説明します。その後、患者さんの体験を話していただきます。また、事前にある程度どのような話を聞きたいかとかをメールに書いてもらっているので、その話題を話す時間もあります。参加者のほとんどが、病気のために困っている人がほとんどで、その参考になりそうな話題を出します。

また、強迫性障害は、適切な治療を受ければ、症状が改善する人もいるので、しばしば症状が治った人が体験談を話しにきてくれます。

家族の会みたいなのも兼ねられていらっしゃるのでしょうか?

患者さんが参加する日とは別に、家族のみが参加する日も開催していました。強迫性障害の患者さんの中には、家族を強迫症状に巻き込み、それが深刻な状態になってしまうケースや、患者さんがなかなか受診しない場合があります。そのため、家族のみの会のほうが深刻なケースが多いので、患者さん向け会とは別の日に行うように開催日を分けました。家族のみの会に、最初、家族が参加して、その話を患者さんが聞いて、後日、患者さん自身が参加するケースもしばしばありました。

 

 

(3)日本の現状と今後への要望

日本での精神科医療が精神疾患に対してどのように変わっていってほしいなど要望があれば、ご自身のご活動も踏まえてお伝えいただきたいです。

英米に比べて、日本の医療システム自体遅れているという社会的な面と、精神科医療が遅れていう医療的な面との2つの側面があると思っています。まず日本の精神科医療機関での治療、医師による薬物療法のみがほとんどです。精神科のクリニックでもカウンセリングをやるところ増えてきていますが、現状では患者さんにとっては、適切な精神療法を行ってくれる医療機関を見つけるのは難しい人が多いだろうと思います。2019年から公認心理師という国家資格ができましたが、その資格を持っている人でも、医療機関で医師とともに適切な精神療法をできる技術を持つ人はそれほど多くないと思います。

それと社会的な面だと、精神疾患への精神療法を健康保険で受けるには、条件が厳しくて、保険が効かない自己負担になる人も多いです。薬物療法なら保険適用するので、患者さんの中に金銭的な理由で、精神療法を避け、薬物療法を選んでしまう人もいます

もう一つは、今の患者さんで、まったく受診したことがない人は実は少なくて、受診したことがある人が割と多くを占めています。多い人で10軒以上いっても治らず、治ることに対して諦めちゃう人や、ひきこもりがちになるいますそのためにも、地域の精神科で改善が難しい患者さんには、より強迫性障害にくわしい専門家を紹介するシステムがあると望ましいです。

その他に、 強迫性障害の患者さんの中には、予約の時間通りに通院すること自体が難しい人がいて、それ有効な方法が「アウトリーチ」訪問診療・支援ですまた、新型コロナによってオンラインで診療を行う遠隔療法を導入した施設が、少しずつ普及してきていますあと、医師、心理師、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師などいろんな専門職がチームとして対応するチーム医療が、欧米のように普及することを望んでいます

 

(4)元当事者ならではの視点

ご自身の当事者性をいかせたと感じるようなエピソードはあったりしましたか。

私の場合、強迫性障害の当事者であったのは約25年前までです。しかし、必ずしも自分の過去の体験が、今の参加者さんと同じとは限らないことは、25年前ネットで見て以降、意識しています。それでも、自分が経験したからこそ、個々の患者さんの内面にある気持ちを、聞き出せる部分もあると思っています。病気を経験した者同士、その家族同士でないとわかりにくい世界はあるもので、そこが強迫性障害を経験したことがない専門家との違いです。

やはり自分の体験というのは、同じような体験をした人を助ける際に活きていくんですね。私も自分が通信制に通っていたことや感覚過敏なことを活かし、同じような症状を持った人のサポートに徹してみたいとあらためて思いました。この度、お話を聞かせていただき、大変ありがとうございました。

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