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日本初のメンタルヘルスに特化したビジコンを主催!メンタルヘルスの起業家支援に込めた想いとは?【Mental Health Biz代表 田中康雅さん】

メンタルヘルス領域に特化したビジネスコンテストMental Health Bizの代表を務める田中さん。産業保健やメンタルヘルス領域でビジネスを創る傍ら、大学院での研究もされている田中さんに、産業保健やメンタルヘルスに関するお考えや、現在の活動についてインタビューさせていただきました。

田中康雅さん

2018年慶應SFC卒。産業医紹介事業の立ち上げや、人事労務が選ぶNo.1健康管理システム『Carely』の事業開発、AI技術を用いた事業開発などを担う。

2021年5月に実施したクラウドファンディングで1303,000円の支援額を集めてメンタルヘルス領域に特化したビジネスコンテスト『Mental Health Biz』を主催。自殺予防を目指す人のオンラインコミュニティ『自殺予防共創ラボ』も運営している。

NeBA Community
インタビュアー(以下 NeBA Community) :
田中さんはメンタルヘルス・産業保健に関して仕事でも大学院でも学んでいられますが、この分野にご興味を持たれたきっかけは何かありますか?
田中康雅さん

大切な人の自殺未遂を経験したことが1番のきっかけでした。
もともとは臨床心理学を勉強していて、カウンセラーになる道を考えていたのですが、カウンセラーになっても問題に対して対処療法的な関わり方しかできないんじゃないかと思ったことがきっかけです。
仕事で困っている人の話を聴いて問題を整理することはできても、その先にある「職場を変える」ということができないと悩みの根本要因は解決しないなと思い、産業保健やメンタルヘルス分野のビジネスについて学び始めました。
NeBA Community

メンタルヘルスに関するビジネスコンテストはどうして実施しようとお考えになったのですか?

田中康雅さん

きっかけとしては、2020年の日本の自殺者数が増加に転じたことです。「日本の産業保健に貢献することで自殺(特に過労自殺)を少しでも減らしたい」という想いで、がむしゃらにスタートアップで働いてきました。ですが、それだけでは全然足りないんだなということを痛感して、何かもっと自分にできることはないかと考えるようになりました。

そして、スタートアップで産業保健、メンタルヘルスに貢献する事業を創りながら、個人でできることを模索していました。

 

・社会から求められていること
・自分の強みを生かせること
・労働集約性がそこまで高くなくできること

この3つを満たすアイデアが、「ビジネスコンテスト」「WEBメディア」「オンラインコミュニティ」を通じて、メンタルヘルスに挑戦する人を応援することだと考えました。

Mental Health Bizはおそらく日本で初めてのメンタルヘルス領域に特化したビジネスコンテストです。
メンタルヘルスの分野は誤解を恐れずにいうと儲かりにくく、専門性が高いため良いビジネスを創るのが難しい分野です。安易な気持ちで手を出してもうまく持続しません。
社会課題として認識されているものの、課題の重要性に対して挑戦の総量が圧倒的に足りていないと感じています。

メンタルヘルス・自殺予防を目指す事業の多くは、国や地方自治体の予算を使うか、民間の基金や個人からの寄付を募るモデルです。その1つ1つはすごく大事な取り組みです。

一方で、他の分野では当たり前に使われている技術やビジネスモデルを使うことで、市場の力でできることはもっとあるだろうなとも感じています。

そのため、民間の企業や個人がもっと挑戦をしていけば業界に貢献できるのではないかという想いでメンタルヘルスの事業創りに挑戦する人を支援する仕組みを創ろうと考えました。

NeBA Community

こちらのビジネスコンテストは、会社として実施しているものなのでしょうか?
田中康雅さん

実施主体としては、個人事業主として、個人で運営しています。
もちろん、自分ひとりではできることが限られているので、色んな人から協力してもらいながら、なんとか運営している感じです。

初年度は小さくテストしてみて、うまく軌道に乗せることができそうであれば、法人化して事業運営していくか、想いに共感いただける企業さんの傘下に入って事業を育てていけたらと思っています。

NeBA Community

ビジネスコンテストだけでなく、自殺予防を志す人を集めたオンラインコミュニティ『自殺予防共創ラボ』も運営されていますが、こちらはどのようなことをしているのでしょうか?

田中康雅さん
自殺予防共創ラボには、現在は80人ほど会員がいます。
クラウドファンディングで応援いただいた方やビジネスコンテストを通じて出会った方に入ってもらっており、メンタルヘルスに対して熱量の高い人が多いです。

活動内容としては、自殺予防に関するオンラインセミナーを月に1回実施して、動画を会員限定のグループで共有しています。
メンタルヘルスに関する事業は創るのも難しいですし、モチベーションを維持してやり続けるのも難しいです。フィードバックがほしいポイントを色々な専門家から意見をもらいながら、一緒に挑戦していく仲間を探せる場にしていけたらなと思います。

NeBA Community

なるほど!自殺予防共創ラボはメンバーの方がメンタルヘルスに関して熱心な方が多いということでお互いを刺激しあえる学びの場になっていそうですね。

田中さんは自殺予防共創ラボを実際に運営されていますが、自殺について完全に反対されているのでしょうか?自殺に関するご意見をお伺いしたいです。

田中康雅さん

僕個人としては、「本人が望むなら、自殺はあってもいいもの」だと捉えています。

しかし心理学的剖検という、自殺された方の生前の様子を分析する研究によって9割ほどの自殺については何らかの精神疾患の診断がつく状態であったと考えられています。
「自らの意思で死を選んでいる」というよりは、「疾病によって死を選んでしまう」という方が現実に近い表現なのかなと思います。
100%全ての自殺がダメかと言うと、そういうわけではなくて、本来防げたはずのもの、本人が心から望んで尊厳死を選んだわけではない死がたくさんあるので、自殺予防には意義があるのだと信じています。

自殺予防をどのように捉えるかは何度も悩まされ、最初は厳しいお叱りの言葉をいただくこともありました。「素人が自殺予防を語るな」と。

徹底的に勉強しながら、謙虚に考え続ける問いだと思います。

NeBA Community

精神科医療やメンタルヘルスケアについて、今後どうなっていけば良いという理想はありますか。
田中康雅さん

「医療」「心理」「政策」「地域」「NPO」「ビジネス」などと領域ごとに分断されて「支援者にとっての都合」「業界にとっての都合」で行き当たりばたりのケアを受けるような形ではなく、支援を受ける側の目線にたって心地よいケアを届けられるようになるのが理想だと思っています。

 

そのためには、政府が進めているマイナポータルが鍵になります。

マイナポータルに学校や職場で受けた健康診断や病院に受診した記録を一括で記録し、それを医療機関やヘルスケアビジネスを作る民間企業、NPOなどが本人の同意取得をすることでスムーズに利活用できるようになれば便利だなと考えています。

 

現状は、健康診断の実施機関によって基準値も違うし、紙のフォーマットも違う。日常生活で体調不良があると、つい最近健康診断で検査をしていても、また同じ検査をすることになったり、過去の健診結果の経過を追うことができなかったりという問題があります。

カウンセリングを受ける時も、自分の状態を毎回ゼロから説明しないといけません。

 

患者さん側・お医者さん両方の労力を削減し、精神科医療はより「医療にしかできないこと」に集中できるようになっていくのが良いのかなと思います。

NeBA Community

なるほど・・・!確かに健康診断や受診歴の情報をまとめることで大幅に無駄が省けて効率化できそうですね!自分にはその発想はありませんでした。

 

田中さんご自身のご活動やご意見を聞かせていただく中で大変学びが多く勉強になりました。

本日のインタビューはここまでにしたいと思います。お忙しい中お時間いただきありがとうございました。

 

田中さんのご活動のサイトのURLなど

 

Mental Health Biz

https://mentalhealthbiz.net/

自殺予防共創ラボ

https://mentalhealthbiz.net/cocreation-for-suicide-prevention/

田中さんのTwitter

https://twitter.com/yasumasa1995

田中さんのnote

https://note.com/yasumasa1995

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