「誰もが気軽に介助できる」社会を目指して
授業開催概要
- 開催校:長野県松川高校
- 実施時期:2025年
- 講師:篠田翔太郎さん(車椅子利用者・起業家)
- 司会進行:西岡春菜
- 参加生徒:22名
- 内容:当事者講演 + 車椅子体験 + 介助体験
講師紹介:篠田翔太郎さん
篠田翔太郎さんは、痙直型脳性まひという障害を持ち、車椅子での生活を送られています。小学校では障害児のための学校に通い、中学校からは地域の普通学級に転校。高校は段差の多い環境、大学はバリアフリーな環境と、様々な環境を経験してこられました。現在は在宅勤務可能な会社で働きながら、起業準備を進めておられます。
趣味は旅行、音楽鑑賞(Spitz)、スポーツ観戦(阪神タイガース、鹿島アントラーズ)など、多くの方と同じように日常を楽しんでいます。
授業の内容
篠田さんが直面してきた課題
篠田さんは、日常生活のあらゆる場面で介助が必要です。

生活全般に介助が必要な場面
- トイレ
- 着脱
- 入浴
大学時代は友人に介助してもらい、福祉職の方に仕事として介助してもらうよりも、友人と一緒に青春を楽しむことを選びました。しかし、社会人になると状況が変わりました。
社会人になって気づいた現実
- 今までの友人と時間が合わない
- 有資格者や福祉従事者でなくても介助はできるのに、介助者がいない
- 親の介助だけでは自立できない
- 自由なプライベート時間が欲しい
起業への挑戦:介助マッチングアプリ「Kigaru」

これらの課題を解決するため、篠田さんはチームを組んで「Kigaru」という介助マッチングアプリの開発に取り組みました。
Kigaruのコンセプト
- 介助が必要な人と「サポ友」(サポートする友人)をつなぐプラットフォーム
- 近くにいるボランティアを即座に検索
- 誰でも簡単に登録・利用できるUI
- 安心して支援を依頼できるレビュー機能
チームでアプリの試作品を作り、実証実験を実施。アプリの検証だけでなく、介助されること・介助することについても検証しました。
車椅子体験:生徒たちの気づき
授業では、生徒たちが実際に車椅子に乗ったり、介助する側を体験しました。
新たな気づき
生徒たちからは、予想とは異なる多くの発見がありました。
操作について
- 「意外と自分でスムーズに動けるようになってびっくりした」
- 「軽く押しただけですごく動く、乗っていても軽い」
- 「コントロールが難しい」
- 「自分で操作しようとするとブレーキを使いながら移動しないといけないので難しかった」
必要な力
- 「うでの力が意外と必要」
- 「車椅子の人は足などが使えないぶん、うでの力が必要だと感じた」
- 「うごかすの結構力を使った」
段差・階段の困難
- 「普段の階段は一回車椅子から降りないといけないのが大変だなと思った」
- 「車椅子は結構押しやすいけど階段とかになると大変」
- 「バリアフリーがあったとしても1人では上がれなかった」
コミュニケーションの重要性
- 「車椅子を押す側が利用者に対して声をかけながらやるのが大事」
- 「ハキハキとした声で話す、同じ目線に立つ」
予想と実際の違い

多くの生徒が、体験前のイメージと実際の体験にギャップを感じました。
意外とできること
- 「乗るのも楽だし、押す方も楽。自分で軽い力で動かせる」
- 「操作は意外と簡単だった」
- 「思ったよりも1人で動ける」
- 「意外と小回りとかができた」
やはり大変なこと
- 「自分が行きたいと思った所に行けない」
- 「操作が難しかった」
- 「重くて真っ直ぐ押すのが難しかった」
- 「スロープをのぼったりするのが大変だった」
- 「少しな段差でも進みづらかったりで困難を感じることがあった」
環境の課題
- 「最近はバリアフリーなところも増えているけど、まだまだ車椅子利用者にとっては不便なところが多い」
- 「公共の場でもバリアフリーがないところの方が多い」
今後の配慮・支援について
体験を通じて、生徒たちは具体的な支援のイメージを持つことができました。
積極的な声かけ
- 「困っている人がいたら助ける」
- 「Can I help you?という感じで話しかけてみる」
- 「自分から進んで寄り添って介護などをしてあげたいです」
具体的な支援
- 「押してあげる、階段登るのを手伝う」
- 「階段とかで困ってたら手伝う」
- 「階段で一緒に車椅子を持ってあげること」
- 「道を開ける。押してあげる」
- 「電車などで席を譲ってあげたりする」
適切な接し方
- 「できるだけ普通の人と同じように接する」
- 「ハキハキとした声で話す、同じ目線に立つ」
- 「障害があることをしっかり理解すること」
理解を深める
- 「自分はできても障害のある方はそれができないことが多いと思うから気遣ってあげたい」
- 「介助が必要な人への理解が深まってよかった」
生徒たちの感想
体験授業を通じて、生徒たちには様々な変化がありました。
貴重な体験
- 「自分では体験できないことを体験することができて、良かったです」
- 「貴重な体験ができて良かった」
- 「すごく新しい経験だと思いました」
- 「障害のある方のお話を聞けたり車椅子を使う体験ができた」
理解の深まり
- 「車椅子に乗ることで大変さを理解することができたし不便な点をわかることができた」
- 「車イスの生活にはたくさんの困難があるとおもいました」
- 「障害者の人がどれだけ大変かわかった」
- 「足が使えないと不便だと思った」
共生への意識
- 「障害があっても人間ということは変わらないから障害のある人とも協力したい」
- 「障害のある方は大変だけど青春は送れるんだなと思いました」
- 「身体に障害がある方が過ごしやすい環境になればいいなあと思いました」
行動への決意
- 「車イスの人の大変さがわかったので、今後車椅子の人をサポートを見つけたらしようと思った」
- 「車椅子の人がいたらサポートしてあげるようにしたい」
個人的なつながり
- 「私のいとこも障害を持っているからこういう話を聞いたり体験できて少ししれてよかった」
まとめ
この授業では、車椅子体験を通じて、障害のある方の日常の困難さと、同時に意外とできることの多さも学びました。また、篠田さんの起業への挑戦と、そこから得た学びを知ることで、失敗から得られる価値についても考える機会となりました。
授業を通じて学んだこと
- 体験の重要性:実際に体験することで、想像だけでは分からない気づきが得られる
- 小さな配慮の積み重ね:声をかける、手伝うといった小さな行動が大きな支えになる
- バリアフリーの課題:まだまだ改善の余地があり、一人ひとりの意識が大切
- 失敗から学ぶ力:成功しなくても、そこから得られる仲間や経験は財産になる
- 共生社会への一歩:障害の有無に関わらず、互いに支え合える関係性を築くこと
篠田さんの「誰でも気軽に介助できる社会」という理念は、今回の授業で生徒たちの心に確実に届きました。この体験が、生徒たちにとって共生社会を考えるきっかけとなり、日常の中で小さな一歩を踏み出す勇気につながることを期待します。

