若者のメンタルヘルスを支える、新しいつながりの形
「家族や友達には相談しづらい」「病院に行くのはハードルが高い」――精神的な悩みを抱える多くの若者が、このような思いを抱えています。日本では10代から30代の死因第1位が自殺であり、その背景には精神疾患が大きく関わっています。このような状況の中で、専門家でも家族でもない「第三の相談先」として注目されているのが、当事者同士による自助グループです。
「Never Be Alone」(NeBA)は、日本では数少ない、青年期の精神疾患当事者が主体となって運営するメンタルヘルス自助グループです。
活動内容
お話会(月1回程度開催)
対象者: 10代後半〜30代前半の精神疾患当事者
参加人数: 5〜20名程度(少人数制)
開催形式: 都内会場またはオンライン
お話会は、精神疾患の当事者によるピアサポートを目的とした活動です。基本的には自由な語り合いの場ですが、「学校生活」「精神疾患との付き合い方」など、参加者が関心を持つテーマを設定することもあります。テーマは事前アンケートや前回の振り返りをもとにスタッフが提案し、当日参加者全員の合意で決定します。
参加者からは次のような声が寄せられています。
- 「同じ経験をした人と話すことで、自分だけじゃないと思えた」
- 「専門家には話しづらいことも、仲間になら話せる」
- 「将来への不安を共有できる場所があることが心の支えになる」
勉強会(2〜3か月に1回開催)
対象者: 当事者に限らず、支援者や学生なども参加可能
参加人数: 10〜20名程度
開催形式: オンライン
勉強会は、当事者の学びを支えることを目的としたオープンな形式のイベントです。精神疾患に関する知識や対処法、社会福祉・医療・教育に関する情報など、参加者の関心や時事的な話題をもとに運営者がテーマを選定します。
自助グループの意義
研究の結果、青年期の参加者にとって自助グループは以下の3つの重要な役割を果たしていることが明らかになりました。
1. ロールモデル獲得の場
症状を抱えながらも大学に通ったり、仕事をしたりしている先輩の姿を見ることで、「自分も将来、こうなれるかもしれない」という希望が生まれます。専門家からのアドバイスとは異なり、実際に同じ経験をした人の「生きた知恵」に触れることができます。
2. 安全な居場所の確保
家族や学校の友達には話しづらいことも、同じ経験をした仲間となら安心して話すことができます。「理解されない」という孤立感が軽減され、「ここでは自分のままでいられる」と感じられる貴重な居場所となっています。
3. 情報獲得の場
医療機関や支援制度、学校での合理的配慮の受け方など、実生活に役立つ情報を得ることができます。教科書的な知識ではなく、「実際にこの病院に通ってみてどうだった」といった体験に基づく情報が共有されます。
自助グループの特徴
「Never Be Alone」は、以下のような自助グループの本質的な特徴を備えています。
- 共通の悩みを持つ仲間:精神疾患という共通の経験を持つ当事者が集う
- 当事者主体の運営:専門家ではなく、メンバー自身が運営を担う
- 相互支援の精神:一方的な支援ではなく、支え合いの関係性を大切にする
- 低コストでアクセス可能:費用はほとんどかからず、参加しやすい
青年期だからこそ必要な支援
青年期は、アイデンティティを形成し、キャリアを選択していく重要な時期です。精神疾患を抱える若者にとって、この発達課題はより複雑で困難なものとなります。
従来の医療機関や相談窓口では、「勇気が必要」と感じる若者が多いという調査結果があります。しかし、ピアサポートのような気軽に相談できる場があれば、相談に踏み出しやすくなるという声も報告されています。
自助グループは、専門的な治療を補完する独自の支援機能を提供します。特に青年期においては、将来への準備の場、キャリア開発の機会、アイデンティティ形成の支えとして重要な役割を果たし得るのです。
運営の工夫と課題
自助グループの運営には、資金不足や人材不足といった課題も存在します。しかし「できる人が、できるときに、できることを」という柔軟な分担や、SNSを活用した情報共有などの工夫により、持続可能な運営を目指しています。
運営に関わること自体が、当事者の成長や自己肯定感の向上につながることも報告されています。参加者が将来的に運営者として活動に関わるようになることで、自助グループは単なる「支援の場」から「自己成長と担い手育成の場」としても機能しています。
つながることの力
「Never Be Alone」という名前には、「決して一人ではない」というメッセージが込められています。精神疾患を抱えながらも、仲間とつながり、支え合い、ともに成長していく――そんな場が、今の若者には必要とされています。
専門的な治療と並行して、こうした当事者同士のつながりを持つことが、青年期の精神的な困難を乗り越える一つの力になるのです。